マウントを取る人の心理|“優位でいたい欲”の正体と生存本能

「えっ、まだそれ使ってるの?」「俺は寝てないけどね」「私なんて全然ダメだよ~(と言いつつブランド品をチラつかせる)」。 会話の端々で「私の方が上である」とアピールしてくる人たち。 いちいち張り合ってくる彼らにイライラさせられた経験は誰にでもあるでしょう。

しかし、彼らがマウントを取るのは、単に性格が悪いからだけではありません。 現代社会という戦場において、マウントは彼らにとっての「防具」であり、自分の心が壊れないようにするための「生存本能(サバイバル術)」そのものなのです。 本記事では、マウントを取る人の心理構造を、「闘争・逃走反応」や「自己保存欲求」といった生物学的・心理学的な視点から7つのセクションで解剖します。

この記事を読むことで、彼らの攻撃的な態度の裏にある「怯え」を見抜き、 不毛な格付け合戦というリングに上がらなくて済む、大人のスルースキルを手に入れられるはずです。

マウントとは?現代社会における「霊長類の格付け」

マウント(Mounting)とは、元々は猿などの霊長類が、相手の背中に乗ることで「自分のほうが序列が上だ」と誇示する行動(マウンティング)を指す言葉です。 人間社会においては、会話や態度を通じて「自分の方が優れている」「幸せである」「知っている」とアピールし、相手より優位に立とうとする行為全般を指します。

現代のコミュニケーションは、物理的な殴り合いがない代わりに、言葉による「見えない殴り合い」が行われています。 マウントを取る人にとって、会話はキャッチボールではなく「ポジショニング争い」です。 相手を精神的に下に見ることで、自分のポジション(優位性)を確保し、安心感を得ようとする行為。 それは、現代人が無意識に行っている「心のマーキング」と言えるでしょう。

マウントを取る人に共通する「攻撃の型」

彼らの攻撃は、直接的な自慢話だけとは限りません。 むしろ、「謙遜」や「親切」の皮を被った高度なマウントの方が厄介です。

特徴1:「アドバイス」という名の支配

「教えてあげる私」と「教わるあなた」という上下関係を固定するための手口です。 善意を装っているため、反論すると「せっかく教えてやったのに」と被害者ぶることができる、攻守最強のポジションを取ります。

特徴2:自虐風自慢(ハンブルブラグ)

一見、自分を下げているように見せかけて、実は高度な自慢を織り交ぜてきます。 直接自慢すると嫌われることを知っているため、予防線を張りながら承認欲求を満たそうとする、計算高い(あるいは無自覚な)戦法です。

なぜ上に立ちたいのか?「闘争・逃走反応」としてのマウント

マウントを取る行為は、彼らにとっての「精神安定剤」であり、自己保存のための必須行動です。 そこには、動物的な本能が深く関わっています。

1. 現代版「闘争・逃走反応(Fight or Flight)」

生物は危機に直面すると「戦うか、逃げるか」を選択します。 自信がなく、常に他者からの評価に怯えている彼らにとって、他者とのコミュニケーションは「脅威」そのものです。 自分が傷つかないためには、先に相手を攻撃して無力化する(闘争)か、圧倒的な差を見せつけて相手を戦意喪失させる(逃走のための威嚇)必要があります。 マウントとは、なめられないための先制攻撃であり、弱さを隠すための鎧なのです。

2. 優越感による「自己保存」の土台

彼らは「ありのままの自分」に価値を感じられません(自己肯定感の低さ)。 そのため、「他人より優れている自分」を確認することでしか、自分を保つことができないのです。 マウントを取り、相手が黙ったり悔しがったりする姿を見ることは、彼らにとって「自分は生きていていい」という許可証を得る儀式のようなものです。 優位性が崩れることは、アイデンティティの崩壊(死)を意味します。

3. 劣等コンプレックスの裏返し

アドラー心理学では、強い優越性の追求は、強い劣等感の裏返しであるとされます(優越コンプレックス)。 本当に自信がある人は、わざわざ人に誇示する必要がありません。 吠える犬ほど弱いのと同じで、マウントを取る人ほど、心の奥底では「自分はダメな人間だ」という強烈な劣等感に震えています。

マウントの種類と具体的なシチュエーション

マウント合戦はあらゆる場所で発生します。 彼らは手持ちのカードなら何でも使って、優位に立とうとします。

行動1:不幸マウントと「寝てない自慢」

幸せだけでなく、「不幸の度合い」や「忙しさ」さえも競争材料にします。 「大変な状況に耐えている自分はすごい」というアピールであり、相手の苦労を矮小化することで優越感を得ます。 同情さえも独占しようとする心理です。

行動2:虎の威を借る「代理マウント」

自分自身のスペックで勝てない時は、家族や知人、所属する組織の威光を借ります。 自分自身がすごいわけではないのに、すごいものと一体化することで大きくなった気になっています。 アイデンティティが他者に依存している典型例です。

認知の歪み|世界を「勝ち負け」でしか見られない

マウントを取る人は、人間関係をフラットな横の繋がりではなく、垂直な「ヒエラルキー(階層)」で捉えています。

1. ゼロサムゲーム思考

「誰かが上がれば、自分が下がる」というゼロサム(合計がゼロになる)の世界に生きています。 そのため、同僚の成功や友人の幸せを素直に喜べません。 他人の幸福は「自分の敗北」を意味するからです。 常に誰かと比較し、勝った負けたを判定し続けないと気が済まない、終わりのない地獄レースを走っています。

2. 他者への道具的認知

目の前の相手を「対等な人間」としてではなく、「自分の価値を確認するための踏み台(道具)」として見ています。 だから平気で相手を不快にさせる発言ができます。 承認欲求というガソリンを補給するための給油機扱いされていることに、周囲は気づき始めています。

ドーパミン中毒と孤独な末路

マウントを取って相手を黙らせた瞬間、脳内では快楽物質(ドーパミン)が分泌されます。 これにより一時的な全能感と安心感を得られますが、その効果は長く続きません。 すぐにまた不安になり、次のターゲットを探してマウントを取るという「依存症」状態に陥ります。

しかし、そんなコミュニケーションを続ける人に、人は寄り付きません。 「あいつと話すと疲れる」と周囲から距離を置かれ、気づけば周りにはイエスマンか、同じようにマウントを取り合う修羅の住人しか残らなくなります。 優位性を求めた結果、誰とも心を通わせられない孤独な王様になってしまうのです。

マウントへの対処法|「土俵に上がらない」が最強

彼らの攻撃をまともに受けてはいけません。 戦わずして勝つ(あるいは負けたふりをしてやり過ごす)のが、大人の処世術です。

1. 「さしすせそ」で接待し、流す

「さすがですね」「知らなかったです」「すごいですね」と、感情を込めずに相槌を打ちます。 彼らは賞賛という餌を求めているだけなので、適当に餌を与えて満足させ、早々に会話を切り上げます。 張り合ったり反論したりすると、相手の闘争本能に火をつけるだけです。 「へー、すごい(棒読み)」が最強の盾になります。

2. 心の中で「憐れむ」

イラッとするのではなく、「この人はこうやってマウントを取らないと、自分を保てない可哀想な人なんだな」と俯瞰して見ます。 相手の背景(自信のなさ、怯え)を想像することで、怒りを慈悲に変えることができます。 精神的に相手より「上」に立つことで、実質的な勝利を得られます。

3. 物理的に距離を置く

関われば関わるほどHPを削られます。 必要最低限の業務連絡以外は接触しない、SNSはミュートする。 あなたの人生という舞台から、彼らを降板させてください。

マウントに関するよくある質問

Q. 無意識にマウントを取ってしまっていないか心配です。

「聞かれてもいないのにアドバイスしていないか?」「相手の話を遮って自分の話をしていないか?」を自問してください。 「すごいと思われたい」という欲求が出た瞬間に口をつぐむ。それだけでマウントは防げます。

Q. マウントを取り返してはいけませんか?

おすすめしません。マウント合戦は泥仕合です。 相手はプロのマウンティング選手ですから、さらに強力な手札(嘘や捏造含む)を出してきます。 同じ土俵に上がった時点で、あなたの負けです。

Q. 仲の良い友人がマウントを取ってきます。

環境の変化(結婚、昇進など)で一時的に不安になっているのかもしれません。 しかし、会うたびに嫌な気持ちになるなら、それはもう「友人」ではありません。 距離を置く時期が来たサインです。

まとめ:本当の自信は、静かで穏やかである

マウントを取る人は、強く見えようとしていますが、誰よりも脆い存在です。 彼らはコミュニケーションという戦場で、必死に自分の居場所を守ろうと戦っているサバイバーなのかもしれません。

しかし、本当に満たされている人は、誰かと比べる必要などないことを知っています。 虎がわざわざ「俺は強いぞ」と猫に自慢しないように、あなたも堂々としていればいいのです。 誰かの上に立つのではなく、自分の足でしっかりと立つこと。 それこそが、何者にも脅かされない本物の強さです。